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「スノーホワイトとの同居顛末記01」

著:グリーン=ヒル
訳:Yen-Xing                                                                      
 

 土のエレメントが強い影響力を持つジオテランの中、ごく一部だけ飛び地のように風のエレメンタルが強い影響力を持つ地域がある。その地域は雪と氷に閉ざされているという……

 その地域はエルフとドワーフ達の支配下にある大森林地帯を抜けた地域に果てしなく広がる荒涼とした山岳地帯にあるという。積層ウェハース理論に寄れば風->地->水の順に積み重なるが、この地域のみ風と水の影響力が非常に増す。風のエレメントと大地のエレメントの配置が逆転しているという説もあるが……それにより一年中氷に閉ざされた非常に過酷な環境となっている
 
 

「え〜そんなこと無いよ〜」
 
 

……雑音が入った様だが口述筆記を続ける。

 この地域は風と水のエレメントが色濃くでている反面、地のエレメントの影響力が非常に低下している。冷寒な気候とやせた土地が相まってイモでさえ満足に栽培できない。しかしながらこの地域には「黄金樹」と呼ばれる植物が育成している。この植物は、我々が普段目にする木とは異なり黄金に輝いている。それはこの植物が金で出来ているからではなく、その気が内部に蓄えている力を放出しているが為である。一説には黄金樹の親とも言うべき真の「黄金樹」が育成する際に周囲の魔力を吸い取ってしまったが為に、この土地はやせ細っているという説もある。この黄金樹は内部にため込んでいる魔力と生命力から様々な薬効をもたらすことが判明している。古代帝国(魔法帝国)時代には既にその薬効は広く一般人にも知られており「黄金樹の枝一本で医者入らず」とまで言われたほどである。しかし、乱獲がたたったのかあるいは大規模な気候風土の変動による物か現在ではこの氷刃山周辺意外での黄金樹の育成は失敗している。植物として育成はする物の黄金に輝かないのだ。しかし、非常に強い繁殖力は維持されているので氷刃山周辺では土地改良に利用しようと言う計画も立ち上がっているという。
 
 

「ねぇ〜 わたしの紹介まだ〜?」
 
 

…………横やりが入ったようだが更に続行する

 この地域では人と精霊が親しく交わると言うことも普通に見受けられる。その関係は過去の六王国が対立した時代の後のエルフ=ドワーフ=人類の対オーク=リザードマン陣営のような覇権を争った結果による物ではなく、共同生活対としての親しい隣人とも言うべき関係である。(精霊と人間が交わったという話も実在する)国家によっては支配者に精霊を据えている国家もあり、これらの地域へ赴くときにはその点を心がけておくべきである。場合によっては精霊への暴言は女王への侮辱として国家侮辱罪が適応され、氷漬けにされる場合もある。
 
 

「そんなことしていないも〜ん」

そういう事言うのはこの口か? (むに〜)
 
 

………………話がそれた。

 こんな事を言うのも私が実際にその地域を旅行した時の体験に基づくからである。それは私が青年だったときの話である。貧乏だった私の実家に変わり私が『学院』で学ぶ学費を援助してくれた豪商が重病になり、その特効薬が先にでてきた「黄金樹」と知った私は『学院』に休学届けをだし、氷刃山へと急いだ。ウォーレスやモーングロシアへ何度かフィールドワークへ赴いた経験から当時の私は氷刃山を少々甘く見ていた。エルドの冬より多少寒いぐらいだろうと想定していた私は氷刃山に吹き荒れる猛烈な冷気の為に一歩も歩けない状態となった。一面の雪原で目印になるような物は何もなく、雪による光の反射で既に視界は失われようとしていた。保温の準備をしていなかったが為に保存食は寒さでカチコチになり、歯が立たない状態となっていた。そんな環境下で私が寒さを呪ったとしても一体だれが責めよう?
 
 

「でも、おかあさまを悪く言うのは事実でしょ?」
「人間は君たちみたいに裸足で雪原を歩けるほど寒さには強くないんだって」
「あの日だって、寒さが気持ちいいぐらいの散歩日和だったのに……だから散歩中に見つけて助けてあげられたんだよっ」
「いきなりアヴァランチで押し流すのを助けるって言うんだったらね」
「あれは直ぐ下にフロストゴングが居たからで……」
「うん、わざとじゃないってのは認めるよ。そうでなかったら君まで一緒に流されるってことは無いからね」
 
 

「あぁもう! これじゃ明日の授業の下地にならないじゃないか!」
「え〜いいじゃない。そのまま精霊と人間のロマンスを語れば。きっと普段の授業よりかはウケがイイと思うな〜」
「この前もキキーモラを授業に呼んだら大騒ぎになったんだ。これ以上授業をむちゃくちゃに出来るか!」
 
 

「大体、殆どわたしと遊んでくれないじゃない。久しぶりに氷刃山から遊びに来たんだからもうちょっとかまってよ〜」
「明日の授業の準備で忙しいんだってば。明日になったらかまってあげるからそれまで待ってくれ! まぁ〜7年前の『もうちょっと大人になったら呼んであげる』っていう約束を本当に覚えているとは思わなかったけれどね……」
「……迷惑だった?」
「そんなことはないっ! むしろ嬉しいよ。本当に来てくれるだなんて……」
 
 

そんなわけで、さっきから私の口述筆記に茶々を入れているのが雪の女王の娘にして雪と氷の申し子「スノーホワイト」のセレーネである。私の命の恩人でもあり、トラブルメーカーでも……
 
 

びしっ!
 
 

何かが一瞬で張り付いたかのような音と共に視界が一瞬で閉ざされ強烈な冷気ともに身動きが閉ざされた。
彼女の力によって一瞬で氷漬けにされたと分かったのはまた後の話である
 

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