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魔力の泉

著:グリーン=ヒル
訳:Yen-Xing
 

古代に栄えた魔法帝国、その遺跡を発掘すると時折噴水のような物を発見することがある。魔法帝国の研究が始まった当時は単なる噴水であると推測され、魔法帝国は各都市に水路を多くたたえた、水路都市だと考えられていたが、調査が進むにつれてこれらの噴水状建築物は全く異なった用途のため作られたことが分かってきた。現在、これらの遺跡はその後の調査で発見された貴重な資料により「魔力の泉」と称されていたことが判明した。

古代帝国に置いては現在からは想像もできないほど魔力重視されていた。一般市民でさえたやすく杖魔術を使うことができ、また、そういった魔術を体質等から利用できない人間は奴隷同然の扱いを受けると言ったようにある種、魔力を根幹としたヒエラルキーが形成されていた。そういったこともあり、帝国では市民へ魔力を安定供給することが課題となっており、それは食糧供給、水資源供給と共に公共事業として専門機関を設置して行われていたようである。

魔法帝国が一般市民への魔力供給をどのようにして行っていたのか?そのシステムは全てが解明されたわけではない。現在の所「三角塔」と呼ばれる世界のあちこちで見られる遺跡群はその名残であり、魔力収集装置の一環であることまでは判明しているがその詳しい用途は現在も解析中である。ただ、三角塔で集められた魔力を一端均一化、精製した後に都市の各部に設置された魔力の泉であふれんばかりに魔力を供給していたらしいと言うことまでは判明している。

皮肉なことに、魔法帝国が滅ぶ過程に置いて、魔力の泉は崩壊原因の一端を担ったらしい。魔力の集中・供給システムが裏目に出て、辺境では急激な魔力の枯渇が発生し、生活の大部分を魔力の泉に頼っていた人々は生活基盤の一部となっていた魔力を失い、都市は崩壊の一途をたどった。都市レベルで首都へ移転を行った所や海洋帝国のように残った魔力をかき集めて住民に大規模な変革を行い生き残ることができた都市はまだ幸いな方であろう。大抵の都市は魔力枯渇に対抗する手段を持ち得ず魔力枯死を迎えた。

また、首都では地方からかき集めた魔力が暴走し、魔力過剰による奇形・暴走が頻発、当時の穀物生産高は一時最盛期の1/5まで落ち込んだという調査資料も残されている。魔法帝国を支える魔力の泉が逆に魔法帝国を滅ぼす一因となったのは何とも皮肉な話である

現在残されている魔力の泉は周辺の魔力を自分で集めて細々と稼働しているにすぎない。しかし、召喚術士一人で使う分には十分な魔力を供給することは可能な物も多い。なお、魔力の泉はその構成上、あまりに存在力の大きい召喚物をその場に維持することができないことを忘れないようにしたい。
 

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