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召喚術とゲート魔法について

著:ガーム=ゼイン
訳:あきたけ
 

 さて、諸子もご存じの通り、世の中には幾通りもの魔法がある。杖魔術や召喚術、
儀式魔法などがそのいい例である。本書はその中でも主に召喚術について述べたもの
ではあるが、杖魔術の中には「ゲート系」と呼ばれるものがあることをご存じだろうか?
 これはその名の通り、魔物などを召喚するためのものである。同等の効果を持つ
マジクアイテムとしてガルガリンの指輪というものもあるが、説明が煩雑になるので
基本的な原理としてはほぼ同じものだと考えて頂きたい。

 ここで、一つ大きな問題が生じることになる。ゲート系杖魔術が魔物などを召喚する
ための杖魔術であることは先述の通りである。では、ゲート系杖魔術と召喚術とは何が
違うのであろうか? 

 召喚術が他の魔術に比べて遙かに難易度が高いことは周知の事実である。ならば、
何故召喚術は他の魔術よりも強力だとされているのか。これはひとえに“真の名”の
せいであると言える。

 ゲート系杖魔術は、その名の通り自分と召喚すべき対象の元に召喚の門を開くもので
ある。つまり、どちらかと言えばテレポートの儀式魔法に近いものであると言える。
 簡単に言えば、対象を「召喚」するだけの魔術であるということだ。よって魔物を
喚ぶことは可能だがそれを支配することは到底叶わない。無闇に召喚すれば喰い殺される
のが関の山と言える。

 対して、召喚術は対象の“真の名”を掌握することを本質とする。対象の存在そのもの
を束縛することにより、掌握に成功すれば対象は術者に逆らうことすら不可能となる
のである。また、召喚術は基本的に自分の間近か、あるいは予め敷いておいた魔法陣の
上にしか召喚を行うことはできない。レベルが低かったり比較的“真の名”を掌握
しやすい魔物については、その近くに自分の支配下にある魔物がいるという条件さえ
満たせば即時召喚という形で召喚することは可能である。しかし、レベルの大きい
魔物や、低レベルでも“真の名”が複雑なものについては即時召喚は不可能である。

 その欠点を補うために、戦闘において召喚術師は支配する魔物にゲート系杖魔術を
使用させることがあるが、これはゲート系杖魔術によって召喚された魔物を、改めて
“真の名”を掌握して支配することを目的とする。近年のソラステルとの戦いにおいて
突如相手本陣に巨大なジャイアントが出現したことがあるが、これも杖魔術によるもの
だと思われている。

 以上の事より、ゲート系杖魔術と召喚術の違いは明確であろう。また、ゲート系杖
魔術が基本的に奇襲のため、あるいは前線における戦力の補充に用いられる事が多いと
いうことが理解してもらえたと思う。

──聖エルド歴295年、ガーム=ゼイン著『六門魔術見聞禄』より抜粋。
 
 

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