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ドラゴンメイル

著:グリーン=ヒル
訳:Yen-Xing
 

先日、学院から管理を任されている倉庫を掃除中に、また貴重なアイテムを見つけることが出来た。大きさはおよそ10cmほど、磨き込まれ鈍い光沢さえ「それ」は持っていた。

「竜牙兵」

古代魔法帝国時代に作られたアイテムの一種だ。予め登録されてある開放呪を唱えるとこのアイテムは瞬時に戦闘能力を持った魔法生物へと変化する。特筆すべきはこの魔法生物「竜牙兵」はその体格にもかかわらず存在量が非常に小さいと言うことだ。召喚術士なら存在量と言う概念は嫌でも認識しているだろう。召喚術には「存在の大きさ」という概念がある。如何なる場所であれ、召喚対象物の「存在の大きさ」の合計がその場所の存在許容量を超える様なことは出来ない。

これは召喚術の基礎である。

ところがこの竜牙兵の「存在の大きさ」は驚くべき事に「0」すなわち存在しないのである。この様な例は土属性のシュリーカーの様に非常に珍しい物である。いかようにこのアイテムは使えるか?

戦力が均衡している状態で竜牙兵を起動させることによりその戦力バランスを崩し、情勢を自分の側へ傾けることが出来るだろう。優れた術士ならば2体同時召喚と言うことも可能と推測される。

近年、学院の研究により魔法帝国時代当時の方法によって竜牙兵を召喚する技術が復活した。しかしこの技術によって召喚される竜牙兵はその存在量が「0」ではなく確固たる存在である。また、アイテムとしての竜牙兵と召喚対象としての竜牙兵の能力はいくつか異なる点も見受けられる。学院で発見された召喚対象としての竜牙兵とアイテムとしての竜牙兵は本来異なる存在なのか?

調査しようにもアイテムとしての竜牙兵の絶対数が非常に少なく、またアイテムとしての竜牙兵は戦闘が終わると塵滅してしまうため難航しているのが現状である。ただ、これまでの文献等から参照するにこの二つの竜牙兵はまず、召喚対象としての竜牙兵が生まれそれを何者かが改良し、携帯できるようにしたのではないかという仮説が立てられている。なお、このアイテムとしての竜牙兵の製法については魔法帝国の崩壊時に伴う大混乱の中で失われたままになっている。

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