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紅禍

著:グリーン=ヒル
訳:Yen-Xing
 

過去、冒険者は既に様々なモンスターに出会ってきた。それは、多様な生態の観察に結びついていっていた。

当初、「紅禍」とも呼ばれ、出会ったなら只避けるのみとされてきた種族「クリムゾン」も研究の結果様々なことが判明してきた。

種族:クリムゾンは我々が地面で目にする蟻と生態系が酷似している。唯一子を産むことが出来るクイーンを中心とした女系社会を築き、各種ごとに役割を分担して仕事をになっている。蟻ならば個体が成長するにつれ担う仕事を変えていくのに対し、個体が担う役割が固定されているという点で大きく異なっている。

総じてクリムゾンは他のモンスターと比較して攻撃力・防御力に勝っている。これといって特殊能力は持たない物のそのポテンシャルは十二分に注意を払うべき物である。僅かな差が生死を分けるのは今更諸君に言うまでもないことと思う。

さらに、注意すべき点はクリムゾンは大抵集団行動を取ると言うことである。「1体みたら10体はいると思え」のことわざ通りであるしかも、彼らは一体が攻撃を受けると他の個体を呼び寄せる。これは我々が感知できない何らかの匂いを使っているという説が現在有力である。私は過去、クリムゾンに襲われたとき、偶然所有していた香水の原液を相手に振りかけることで援軍を振り切ることが出来た。が何時も香水の原液を所有するのも問題であるし、諸君らの工夫のしどころで有ろう。

また、「渦を巻く香料」という物が文献に出てくる。これは除虫菊をベースに作られた殺虫剤であり、インセクトやクリムゾン退治にも多大な威力を発揮したと有る。残念なことに、現在その製法は失われており我々が手にすることは出来ないが、もし、その製法を記した文献を見かけたならギルドもしくは学院に直ちに報告してもらいたい。これが有れば「紅禍」とまで呼ばれているクリムゾンの被害を大幅に減らすことが出来るであろう。

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合わせて各種について簡単な説明をしておく

○クリムゾン・アント
人間よりやや小さいサイズ。若年の個体であり、まだその外骨格は十分な強度を持たず倒すのは容易である。集団性が強く、他の個体に呼ばれてやってくることもある。小さいとはいえ大顎は人間を易々と切断する強靱な物なので注意が必要である。

○クリムゾン・ソルジャー
先述のクリムゾン・アントが成長したもの。既に人間を越えるサイズとなっており外骨格は剣をはじき返すほどの強度を持つようになる。恐ろしいのは集団性を失っていないことであり。多数のクリムゾン・ソルジャーに囲まれたならその力と数で大抵の物は食らいつくされてしまう。

○クリムゾン・ガード
クリムゾン・ソルジャーが成長しきり、成虫となった姿。此処まで成長するのに5年かかる。その大きさは2mを越え、側にいるだけで威圧感を感じる。外骨格はハードレザーを遙かに越える強度を持ち安物の金属鎧より強固である (砂漠地帯にいる部族によってはこれをうまく利用し鎧を作る物もいるらしい)並大抵のことでは倒すのは困難であり、準備が十分出来ていない場合は即座に退却すべきであろう。 なにしろ、成虫となってさえ仲間を即時に呼び寄せるのだから。

○クリムゾン・アタッカー
本来飛行能力を持たないクリムゾンであるが、此の種は別である。偵察及び餌の採取に特化し進化した種であり、その代わりに集団性を失っているが、獲物をとらえるための大顎と飛行能力が著しく発達しており、エレファントでさえ倒し、餌として巣に持ち帰る。我々も餌にされないよう十分注意を払いたい。なお、近似種としてクリムゾン・ウィングという種がありこれはクリムゾン・アタッカーより幾分弱いものの集団性を持つクリムゾン・ウィングはクリムゾン・アタッカーの未分化種であるという説が有力である。

○クリムゾン・ジェネラル
女王の側近であり近衛兵である彼らは集団性を持たない。その大きさはエレファント並であり、女王が攻撃されるようなことが有ればその身を挺し防御し、また侵入者を排除する。逆に言えば彼らがいると言うことは至近距離に女王がいることに他ならない。

○クリムゾン・クイーン
彼らの母であり、また女王である。巣の一番奥に生息しており大抵は一つの巣に一体である。が、希に巣に複数体いたという事例も報告されており十分な注意が必要である。クリムゾンであるが故かスペル等は使えず、ディフェンダー能力を持つ程度である。

○キング・クリムゾン
巣別れの時にのみ誕生する雄。巣別れ直前にのみ発生し、その役割は遺伝子交雑にあると言ってよく、滅多なことではお目にかかれない。文献等にもその記述は皆無である。分かっている僅かな事は、戦闘力は丸でなく、顎も発達していない。しかし、この雄が出すフェロモンはクリムゾンを非情に興奮させ、凶暴化させる。このフェロモンはクリムゾンのみならず他の昆虫にまで影響を及ぼすので厳重な注意が必要である

蟻であるため巣別れ等の現象をみることもある。クリムゾンの場合、大きくなりすぎた巣にクイーンが複数誕生することから始まる。姫とも言うべき彼女たちは単独で巣から離れるのではなく元の巣からまとまったグループを形成し、集団単位で分かれていく。移動の際には進路上の動物・植物は尽く食い尽くされていく。これがソラステルで恐れられている「紅禍」である。この「紅禍」は数十年に一度、一斉に発生するためその予測はソラステルで最重要事項とされている。近年では発生の半年前に予測が可能になっており、被害の軽減に大きく役立っている。もし、諸君らがソラステルを旅するような事が有れば常にこの「紅禍」警報には注意を払い、情報を得るようにして欲しい。
 

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