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Yen-Xingのあばら屋7周年記念及び正月用小説 

BSD外伝10:「元旦模様」

「「「「あけましておめでとうございます」」」」

1月1日朝、一同、リビングの炬燵に入って新年の挨拶だ。私の右にはいつもの濃紺ワンピースに白いエルロンドレスではなく正月仕様の青を基調とした華やかな振り袖を纏ったネコミミメイド……我が家の家事業務を統括する「ティナ=バークレー」が座っていた。私の正面には同じく赤を基調とした華やかな振り袖に着替えたネコミミメイド「レイナ=トーバルズ」が座っている。左手には妖精の「メイル=デーモン」と客人の「美宇=i=TRON」が座っていた。もとより美宇の服装は何時も和服だが……

「しかし、こうして和服着るのも新鮮な感じで良いね」
「ご主人さま、誉めてもお年玉は出ませんよ。まぁ、悪い気はしませんが」
「ティナさんは3日ぐらいずっとネット上で振り袖のデザイン検討していたんですよ」
「それいわないでくださいっ!」

とまぁ。いつものようにお喋りを楽しみながら炬燵の上に積み上げたお菓子を食べていく。炬燵にミカンと行きたいところだが彼女たちは余りミカンが好きではないらしい。曰く

「味は嫌いじゃあないんですがどうも香がダメです」

とのこと、猫も色々あるらしい。

さて、今回の年末年始はは比較的落ち着いており、警戒態勢もかなりランクを下げている。トラフィックも想定範囲内だしまぁ、これなら新年ゆっくり過ごせるだろう。そう思って量はそれほどではないがお節料理におとそなんて物を知り合いの料亭に頼んで1つ用意して貰った。流石に彼女たちにはちょっとお節のレシピは辛かったようだ。レシピを見せたことは見せたのだが初見で作るには自身がない、とのこと。

「あ、ちょっと監視ルームに行って来る」
「いってらっしゃいませ〜」

適当にお重をつついて各人1杯ずつちょっと舐める程度におとそをあけ、私はネットのトラフィックをチェックするため監視ルームに向かった。すでにティナ達は良い感じにできあがっていたが泥酔する前に止まるだろうからほっといても大丈夫だろう。

さて、キッチンにある5段のミニお重を手に取ると私はいくつものゲートを通過し、監視センターへ入った
其処ではティナ配下の部下……デフォルメしたイカ達「スクイッド」チームが監視業務をしていた

「明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます、御当主ではないですか、如何なされましたかな?」
「いや、新年業務お疲れさまと思って、お節のデリバリーを」
「これはかたじけない、モンゴウ、ダイオウ、先に食べてくれ。俺とアオリ、ホタルは後番で食べるから」
「オレ、タベル」
「頂きます。いやぁ、こういう新年も悪くないですなぁ」
「じゃあ、宜しくお願いします」
「任されよ」

さて、リビングに戻るとティナとレイナが楽しそうに話していた

「でも、ティナさんって何時も何かしらしでかしているじゃあないですかぁ」
「いつもとはお言葉ですよぉ〜、そんなにしていませんって」
「ワインボトルひっくり返したり、シッポで紅茶缶引っかけたり」
「そうそう、SFTGFOP(最上級オレンジペコ)をひっくり返したときは流石に焦りました」

「その話、報告受けていないんだけど?」

「……え!?」

私の割り込みにティナの表情が一瞬で凍り付く。まさにフリーズしたかのようだ。
私が割り込みティナが凍ったのも理由がある。「SFTGFOP」オレンジペコの等級の中でも最上級の物で私でさえ普段は飲まない。本当にとっておきの来客用に用意してあるお茶の葉だ、もっとも、賞味期限があるので適当なところで割り切って飲んでしまうことにしているが……それにしてもその話は初耳だ。凍り付いて応答がないティナにリブート処理を掛けて置いて事情をレイナに問いただす

「一体どうしたって言うんだ?」
「数ヶ月前のことなんですけど、『また』ティナさんがうっかり缶ごとSFTGFOPをひっくり返しまして……結局ティナさんがそのお茶の葉買い直してはいますが」
「また、かぁ。やっちゃった物はしょうがないけど……ミスの隠匿はきっちり問いただしておかないとね」
「では……?」
「フリーズから戻ったら、今夜私の部屋へ来るように、管理者権限での命令だから拒否は認めないってティナに伝えて置いて」
「かしこまりました。マスター」

私の言づてに神妙に答えるレイナ、私が管理者権限でコマンドを出すことは滅多にないけどそれだけに管理者権限の命令は絶対で重要なのだ。そうしてから、私はリビングのとなりの部屋で年賀状の整理をしながら「おしおき」で一体何をさせようかと思いを巡らすのだった。この前はフラクタル計算2億回だったし……今度はハノイの塔計算でも良いかな?
 
 
 
 

終わり