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Yen-Xingのあばら屋 BSD物語出張編04

『首都遠征編』3rd
 

はじめに

この話はフィクションです。作中に登場する人物・出来事は全て架空の物です。どっかで聞いたことがある様な事例が有るかも知れませんが、それはきっと貴方の気のせいです。間違っても該当しそうな関係機関・各人、その他に問い合わせしない様お願いします。
 

 登場人物紹介

 私(管理人=《オーヴァーロード》)
 ->このサイトの管理人

 ティナ(ティナ=バークレー)
 レイナ(レイナ=トーバルズ)
  ->UNIXネコミミメイド

 メイル(メイル=デーモン)
  ->自立稼働型自動メール送受信制御精霊

 美宇(美宇=I=トロン)
  ->TRONネコミミ守護精霊

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    0.12月某日
    1.12/29
    2.12/30 早朝
    3.12/30 午前
    4.12/30 午前
    5.12/30 17:00
    6.12/31 エピローグ
</index>
 
 
 


0.12月某日

「今年の【同人誌即売会】はみんなで行くぞ!」

「「「えー!?」」」

その場にいた人数分、驚きの声が挙がる

「メイルはサイズがサイズですから料金は殆どかからないとしてもそれでも4人分なんですよ!?始終お小遣いに不自由しているご主人様、お財布大丈夫なんですかっ!?」

「ボクだって一人分だよぉ」

「メイル、小学生みたいな事言わないの。ともあれほら、コレ見て」
メイルの抗議を却下しつつ、管理人はチケットを取り出す。それは往復ミヤコ〜西京間夜行高速エアバス指定席チケット4枚分と西京のホテルシングル4室予約表だった。

「年末の予約が集中するこのタイミングでよくとれましたね〜」
「予約開始と同時に急いで取ったからね。それでも結構危なかったけど」
「そういえば1ヶ月ほど前に携帯デバイスからのインターネット接続が急激に上昇したときがありましたがその時に予約されたんですね?」
「家に帰ってからじゃあ間に合いそうになかったからかなり高く付いたけど。それでもぎりぎりだったよ」

「屋敷の管理は……我が行うのか?」
「いや、美宇を含めてチケットは4枚だよ。屋敷はスクイッド達に任せてもそろそろ大丈夫だろ、ほーすけも居ることだし」

「スクイッド」に「ほーすけ」……それはティナ配下のセキュリティシステム達だ。「スクイッド」は擬人化されたイカの姿(国民的土管工事夫遊戯に出てくるゲッソーを想像してもらいたい)を、「ほーすけ」は子供のフクロウの縫いぐるみそっくりな姿を、それぞれしている。昔はティナが直接屋敷の警護をしていたため全員でお出かけなどは無理だったのだが、最近はスクイッドやほーすけが主に警護しておりティナはその統括をしている。特に緊急のトラブルでもない限りティナも大分手を離せるようになった。サーバー管理のレイナやメイルも業務の大半は自動化しており状況はティナと同じ様な物。最近になりようやく彼女たちも屋敷の通常業務……メイドとしての仕事に専念できるようになってきたのだ。(もっとも、元々マルチタスクな彼女たちのこと、メイドの業務とサーバーの業務を同時並行できないなどと言うことはないのだが)

ともかく、屋敷で働くメンバーが増えたおかげで業務が軽減され主要メンバーが旅行に行けるようになったのは事実だ。全員で遠くへお出かけというのは初めてだろう


1.12/29

「ふあぁぁぁ」
「流石に疲れましたね〜」
「セミコンパートメント(個室)での寝台そんなに寝心地が悪いってことは無かったけれど……どこか熟睡できてないね。」
「というか何でモーニングサービスにコーヒーと日本茶があって紅茶がないんですか!」「むやみに騒いだところで出る物では無かろう」
「そりゃあ美宇さんは日本茶でしょうから問題ないでしょうが」
「コーヒーにしても豆を挽いた物が出るわけでもないし。騒いでも仕方ないだろう」
「ええ、それはまぁそうなのですが」

美宇に微妙に気勢をそがれたティナ、昨夜の夜行エアバスの批評をしながらエアバス到着地西京駅九重州口から紙田へと移動する。この時点で朝九時、予定では七時半には到着する予定だったが道中でニアミスか何かあったらしく相当の遅れが出ていた。とはいえこの国最大のサイバーシティ「秋葉原」が稼働するのは11時から、まだ余裕はあるだろう。
宿泊予定のホテルに立ち寄り余計な荷物は此処で全てあずける。カプセルホテルなどとは違いカウンターの対応は丁寧で安心できる。部屋へはまだ案内できないがこの時点でチェックイン手続きも済ませてもらい。鞄一つを手に秋葉原へと向かった。そこで我々を待ち受けていたのは……

「秋葉原がメイドに浸食されている……」

ここまで、はっきり言ってティナ達は結構異様だった。それなりに長く住んでいる屋敷近辺はともかく近郊の都市ではまだまだメイドなど連れ歩けば周囲の目を引きすぎて話にならないためティナ達を連れ歩くときは携帯デバイスに収容して連れ歩いていたがこの秋葉原では普通に見かけることが出来た。ざっと1/200というところか?どちらを見ても視界の中に一人はいるという状態だ。

「なるほど〜。古参のユーザさんが秋葉原の現状を嘆くわけですわ〜」
管理している掲示板で時々ユーザを装って書き込みしているレイナによると古参の腕の立つ自作PCユーザ達の間で現状の秋葉原を嘆く声があると言うが分からないでもない。
メイドは確かに良い物だが町中に叛乱するような物でもないとは思う
「ご主人様、感想はもっともだと思いますが私達を連れ歩いている時点で五十歩百歩かと」
「……いつのまに読心術をっ!」
「思いっきり声に出していましたわ」

管理人は若干の恥ずかしい思いをうち捨てて目的の店へ歩き出した
「旅の恥はかきすて」と言うことだし
 

さて、目的の店は雑居ビルの2階、表通りに小さな立て看板が有る他は特段大きく宣伝等はしていない店だった。

「此処で宜しいんですか?」
「立て看板の通りなら……うん、多分此処だ」

携帯情報デバイスに表示させた地図と見比べながら建物内の階段を上がり重い扉を開ける
「お帰りなさいませ」

予想を反し、帰ってきたのは渋い……執事の声だった

「こ、此処は?」

予想をしていなかったのか、ティナがちょっと引き気味で私に尋ねる。

「最近出来たばかりのメイド整体だよ」
「あら、私のマッサージではご満足いただけませんでしたか〜?」
にっこりと微笑みながらレイナが両手を顔の前でかざす。その手の先はいつのまにかにくきうグローブになったいたが、その先は猫その物の鋭利な爪が顔を覗かせていた。コレがまた強烈にいたいんだ……それはともかく、店の人に私は要件を伝えた

「先ほど電話でお願いしたとおり、マッサージを頼みたいのはこちらのメイド二人です」
「「え〜!!?」」

今度は本当に不意を付かれたのかティナとレイナ二人して驚きの声を上げる、いつの間にか担当のメイドらしきひとが彼女たちの背後に回り込み二人をカーテンのむこう側へと案内する。残った我々は先ほどの執事さんに勧められるままテーブルにむかい紅茶をごちそうになっていた。

「このテーブルなかなかすばらしいですね」
「わざわざ1910年頃の英国製の物を探して集めてきたんですよ」
「道理で風格が違いますね」
「まぁ、やるからにはそれなりにこだわりたいと」

と、和やかな雰囲気で会話が弾む。カーテンの向こうから整体を受ける二人の悲鳴が終始聞こえているのは全員さりげなく無視していた。

「お。施術が終了したようですね」
「どうだった?ティナ」
「ええ、デスクワークのしすぎによる肩部アクチュエータの潤滑剤不足等かなり指摘受けました」
「こちらもへろへろです〜」

「ご主人様、もう少し彼女たちの健康管理に気を使ってあげて下さい、Unixネコミミメイドといえどそれなりに疲労は溜まりますよ」
「はい、注意します(^^ゞ」

とまぁ、運用に当たっての様々な注意点を色々教えてもらい、その店を後にしたのだった。


2.12/30 早朝

まどろみの中、体を揺すぶられる。今日の出発は早いためティナに起こしてくれるよう頼んだのだ。無論ネット上で時間の同期を取っているため寸刻の狂いもないが……
「起きて下さい。もう時間ですよ!」
「後五分……いや後10分」
「先ほどもそうおっしゃったじゃないですか。2度目はありませんよ」
「とは言っても眠いし、、、、、、」
「そうですか、では」
ティナが何かのアクションを起こす前に先手を打って安眠を守る
「、、、、、、su****** passphrase**************************** もうちょっと寝るから宜しく〜」
「あ〜!? 管理者権限まで使って寝ようとするなんてっ!?」
「でも、今のコマンドはティナさんにしか有効ではありませんね〜ティナさん、私の合図でそのコップをひっくり返して下さい」

はっと掛け布団の下で丸くなろうとした管理人。しかし無情にも私が掛け布団をしっかり掴みなおす前に掛け布団は強烈な力で引き剥がされた。そして首筋に凍てつくような何かが滴った……

あえて、その描写を此処では省きたいがきっちりしっかりきっぱり目が覚めたのは確かだった。

それから30分後、シャワーを浴び、体を温めなおしたうえで朝食を取り、まだ夜が明け切らぬ内にホテルをでた。向かうは有明、言わずと知れた同人誌即売会会場だが……

「えー、メイルを除いて全員携帯PDA内で待機」
「我々が居ては邪魔であろうか?」
「いや、邪魔というか集団行動が難しいって言うのもあるけど、会場外でコスプレは禁止らしいし」
「コレはコスプレではありません!」
「って、外でコスプレする人はみんなそういうらしいよ?」
「まぁ、秋葉原ならいざ知らず此のメイド服は目立って仕方がないかも知れませんね〜」「承知しました。でも何かありましたら直ちにPDAより出ますので宜しくお願いします」

そういうとティナは腕時計型PDAへ、レイナと美宇は鞄の中の端末内へ入った。
「マスター。どうしてボクは出てていいの?」
「どうせお前のことだ。中にしまっておいたら外見せろってうるさいのは分かり切っているからね。それなら最初から外に出しておいた方が良い。」
「むー」

素直に喜べないのかメイルがふくれていたが私が改札に向かって歩き始めると遅れないように慌てて付いてきた。

さて、会場へむかう臨海線は乗車率100%を越える状態だった。これは恒例のこととしてこの状態でメイルに付いてきてもらうのはちょっと至難だな……

「メイル、会場に着いたら連絡するからそれまで駅で待機。できるね?」
「ここじゃあ、アクセスポイントブロックされていて潜るのに時間が掛かるよぉ」
「ならば我も付いていこう、この人混みではたまらぬ」

気配をどうやって消していたのかいきなり美宇が現れた。確かに美宇の力を借りればTron内蔵型の端末からネットワークに接続できるだろう。美宇自身も結構小さいので回線に若干のトラフィック負荷がかかる物の転送は出来るはずだ

「主よ、今失礼なことを考えなかったか?」
「いや、気のせい気のせい(^^ゞ」

駅に別働隊を残し、満員電車の中へどうにか乗り込んだ物の
「むぐ〜〜〜!!」
「毎年こうなのですかぁ!?」
「年々酷くなっているという話だけどぉぉぉ」
カーブを曲がったり駅に着くたびに社内のあちこちから悲鳴が聞こえる。社内で無理な力が掛かっているために結構強烈に押されている。その社内は目的の駅へ近づくたびに一種異様な雰囲気に包まれていった。其処へ……

「お客様へ申し上げます。会場へ一刻も早くお付きになりたいお気持ちは分かりますが安全のためゆっくりと下車願いますよう宜しくお願いします」

社内大爆笑。車掌にまで釘を差されては恥ずかしいという物だ(でも、駅に着いた直後にホームへ向かってダッシュを掛けた馬鹿者が居たらしい。)

ティナ達を入れた端末の安全もあり、ゆっくりと車内を降り。会場までを歩く。外は以前暗やみに包まれており係りの案内にそってぐるりと建物を回り込むように歩く。案内されたのは海に面した駐車場。此処で行列を造って待てと言うことらしい。海からの風が吹き込んでかなり冷える。それを当て込んで屋台が来ていたがこういう所の例に漏れず値段は高かった。

「魔法瓶にコーヒーでも入れて持ってくれば良かったかな」
「でも、魔法瓶が荷物になりませんか?」
「とはいえ、この状態であと3〜4時間も待つのはちょっとつらいなぁ」
「そういうことでしたらお任せ下さい〜」
と、鞄の背に当たるところがほんのり暖かくなった。

「レイナ?」

「空冷Fanの稼働スピードを下げて筐体温度を上げました。これで暖をとって下さい」
「あ〜っ!レイナずるい!!」
「腕時計に収まった貴方の負けですわ〜」

どうでも良いが言い争いを一々眼鏡フレームのメッセージ欄に流すのは辞めて欲しい。おかげで視界がログで一杯だ。

「さて、忘れない内にメイルに連絡を……あれ、繋がらない。」
携帯情報端末からメイルにメールを打とうとしたらそもそもメール自体が発振規制されていた。これだけの人だからやむを得ないか……と思ってしまおうとしたら突然画面が揺らぎメイルの顔が映された

「マスター。聞こえる?」
「映っているけど……一体どうやったの?」
「キャリアの通信にムリヤリパケット単位で割り込んで通信送っているの」
言われてみれば若干音声や画像が荒い。が、無茶苦茶するなぁ
「メイル! また余所の回線で無茶をして……早く回線開放しなさい!」
「は〜い」
しぶしぶティナに言われて2人分をメイルは転送する。確かにムリヤリ回線に割り込んでいたらどういう影響が出るか分かった物ではない。ティナの言うことももっともだが……「メイル、二人分の転送、お疲れさま」
「ありがとう!マスター!!」
「時間まで近くのネットカフェで待機していて良いよ。レイナ、彼女たちに付いていてあげてくれ」
「了解しましたわ〜」

案内の係員に誰何されていたようだが程なくレイナ達は私に手を振って駅近くのネットカフェへと向かっていった。

「宜しいんですか?」
「レイナが付いていれば滅多なことにはならないさ」
「まぁ、そうですけど……」
「その替わりティナ、君にはしっかりボクをサポートしてもらわなきゃいけないから準備の方を宜しく」
「会場内のナビゲートですね。準備は万端です」

膨大な面積を誇る会場での最短ルートをティナに案内してもらう予定なのだ。果たしてどうなる事やら……


3.12/30 午前
 

係員が行列に向かって整列をかけ始めた。そろそろ入場準備らしい
「ティナ、場内マップのナビゲート宜しく」
「お任せ下さい。ところでそろそろレイナ達も呼び戻しますか?」
「彼女たちがいるネットカフェから直接場内へは進入できないか?」
「ちょっと調べてみましたがかなり強力な障壁が展開されています。開放予定時刻は12:00ですがそれ以前に障壁の突破を試みた場合は問答無用で逆探の上拘束するようですわね。まぁ……やめておいた方が無難だと思います」
どうやら強制的に電子転送な内部進入を試みて実際にその場で拘束された者が何人か朝の行列中でも見かけられた。流石に運営側も相当強力な防護体勢を引いていると見える。

程なく行列は動きだし、同時に同人誌即売会の開会が宣言された。流れにのって会場へ進入するも……

「短距離転送!?」
「しかも内部の座標はある程度ランダムな方が流れが速いというおまけ付きですね」
「……ティナ、任せる」
「はい?」

えいやとばかりにワープポイントに飛び込む。僅かな目眩と主に会場内に放り込まれた。係員がその場に立ち止まらずに前へ進むように促しているため、流れは動いているが……「と、言うわけでティナの出番だ」
「ご主人様、周囲画像を」
「これで良い?」
腕時計を裾から出してCCD部分が周囲捉えられるようにする。館内では写真撮影及びそれに類する行為は禁止されているため禁止行為ぎりぎりの作業だ。
待つこと数秒、腕時計型PDAの震動と共にティナからの返事が視界内のメッセージウィンドに表示された。
「お待たせしました。X:aa Y:bb Z:cc 東館第2ポート前です」
「じゃあ、レイナ達を呼び出すか」

館内でも人気の少ない電話コーナーに駆け込み、携帯PDAで、彼女たちを呼び出す。回線自体が若干重くなっている物の何とか連絡が取れた

「レイナ、応援を頼む」
「それが通信規制が入っていまして大容量データ転送が出来ない状態です〜」
「えー!? じゃあ、こっちに合流できない!?」
「12時の会場開放を待って合流しますのでそれまで何とかがんばって下さい〜」
「ひょえ〜」
 

「と言うわけでボク達だけでナントカしなきゃいけないみたいだ」
「とはいえ、大手は全て通販に回すとして……挨拶回りが殆どですね」
「そうだ、挨拶回りで寄るところがあったんだ。」

私が真っ先に立ち寄ったところ。それは公共機関同好会が集まるエリアだった
「鉄道にご主人様が若干興味をお持ちなのは存じておりますが……旅客機ですか?」
「えーと、あったあった。このサークルだ」

一見何の変哲もない飛行機FANのサイト。其処には小冊子がいくつかと手製のカレンダーがおいてあった。そのサークルの売り子らしき人に声を掛けるとたいそう驚かれた。 なぜそんな昔のハンドルネームを知っているのかと

「ご主人……さま? こちらの方ひょっとして……」
「そう、ずいぶん昔に君たちの強電用スキンを作ってくれた方だよ」

以前はまったく別ジャンルのサイトを運営していて、ティナ達のイラストはその時に頂いた。その後諸般の事情によりサイトは航空の方面に大きく転換したが現在も活躍されているようで何よりだった。

ほか、会場内をピンポイントで回りつつ他のサークルを適当に漁っていく。中でも圧巻はペーパークラフトゲルググ! 作れないことはないだろうと思っていたがアレは大した物でした。


4.12/30 午前

「お待たせしました〜」
「レイナ、お疲れさま」
「指示通り、西館の買い出し終わらせてきましたわ」
「ほむ、連絡の通り超大手は無理と判断したところは全て通販、他は買ってきたんだね」「やはり単価がすごいのでそれなりの出費です〜」
「もう、あるきたくない〜」
「同感だ」

若干寄れた感じのメイルと美宇がへばっている。まぁ、体力アル方じゃあないしなぁ
「彼女たち、他の人たちにかなり声を掛けられていましたから捌くの大変でしたわ」
「そういうレイナは?」
「さぁ、なんででしょうねぇ〜?」

にっこりほほえむ彼女の両手はにくきうグローブモードになっていた。その先から見える爪が曇っているのは……見なかったことにしよう


5.12/30 17:00
 

我々は一同へろへろになりつつも秋葉原へ帰還、近くのネットカフェで複数人用のブースを借りるとそこで荷物の整理をはじめた。ネットカフェは普段より込んでいるようだ。おそらく遠方からの遠征者が同じように拠点にしているのだろう。とはいえ複数人用のブースはそれなりに高額なため、利用者はそれほど多くないようだ。時間を待たずにすんなり潜り込めた。

「この辺の本は全てキジトラ信濃の宅急便で送るとして……同人ソフトパッケージはどうします?」
「中身を全部今此処で抜いてケースは全て降り畳んで収納、ディスクは此処でチェック後不燃シートに入れてこっちのケースに入れて」
「あ〜メイル! まだ内容読んではダメです!」
「とか何とか言ってティナお姉ぇちゃんもさっきディスクの内容マウントしていたじゃない」
「アレはディスクが正常に読み込めるかどうか確認していただけですっ!」
「そういいながら/binディレクトリにある此の隠し属性な上に読取不可なこのファイルはなんだ?」
「あ〜!? ご主人様覗いちゃ駄目です!!」
「……メイドマニュアル不完全訳? 何だこりゃ」
「19世紀に実在したメイド用マニュアルの部分訳だそうですわ〜」
「なるほど、さらなる家事技術の向上を目指して、か。」
「というより、ティナの家事って未だに見ていて危ない部分多いからなぁ」
「そうですわね〜この前もジンジャーティー造るのに生姜の分量10倍にして入れていましたし」
「アレは強烈だった……」
「振り上げたモップの先でワイングラス5〜6こ一気に割ったこともありましたよね〜」「ソレは不可抗力ですっ!」
 
 
 
 

「……皆さんがいじめる……」
「ほらほらみんな、ティナで遊ばないの」
「む〜」
「ティナだってわざとやっているわけじゃないんだから。それより荷造りこっちは出来たけどみんなはどうなの?」

「「「は、はい!!」」」

「難儀なことよのう。」
「仕方がないよ。余り余人に見せたくない物も混じっているし」
 
 
 
 

数時間後、幾周りか小さくなった荷物を手に我々は帰路に就いたのだった。


6.12/31 エピローグ

「さて、他のサイトさんのレポートはどうなのかな? っと」
「あらあら、メイドバスなんてあったようですね」
「……なんだそりゃ」
「バスガイドではなくメイドが乗っていたようですけど」
「意味有るのか? そのメイド」
「メイド服さえ着ていればいいという物ではないと思われますが」
「それ、自分自身否定していないか?」
「ネコミミメイドUNIXはそれがOSとして人々に奉仕する仕事を請け負っているから良いんです!!!」
「ま、まぁ、それはいいとして。後回りきれなかったサークルの通販手続きを」

「少しお待ちになって下さい〜」
「? レイナ??」

「これをご覧願いますぅ」
渡された紙の明細を読んで管理人とティナは絶句した
「まじ?」
「本気と書いてマジですわ」
「もう2〜3万まからない?」
「残念ですけどまかりませんわ〜」

「これは……この分の過剰出費分ご主人様のお小遣いから引く必要がありますね」
「私も同意ですわ〜」

「なにとぞお慈悲を〜!!!」

「「だめです!!」」

かくして、冬のコミックマーケット遠征は予算大幅オーバーと管理人の当月お小遣い大幅カットという幕切れを迎えたのであった。

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