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Yen-Xingのあばら屋 BSD物語出張編03

『首都遠征編』2nd
 

はじめに

この話はフィクションです。作中に登場する人物・出来事は全て架空の物です。どっかで聞いたことがある様な事例が有るかも知れませんが、それはきっと貴方の気のせいです。間違っても該当しそうな関係機関・各人、その他に問い合わせしない様お願いします。
 

 登場人物紹介

 私(管理人=《オーヴァーロード》)
 ->このサイトの管理人

 ティナ(ティナ=バークレー)
  ->UNIXネコミミメイド、怪電波を操る

 4/29 深夜

 屋敷から足音を忍ばせて出ていく影が一つ。それは管理人だった

 「5/4の大陸からのラッシュはほぼ無いっていう話だし、それまでには帰ってこれるから……とはいえ、みんなに見つかるとまずいからなぁ……でも、なんでこの屋敷の管理人たる私が足音忍ばせてでていかにゃならないんだ?」

 そう、管理人は突発的にGWに首都サイバーシティを強襲する計画を立てたのだ。とはいえまさに突発的で、チケット・ホテルも電撃的に予約。まだ。ティナ達には気が付かれていない……はずだ。黒いリュックの中には資金と最低限の着替えのみ、至って軽装だ。

周囲を気にしつつ、屋敷から遠ざかる影、それをじっと高感度CCD映像で監視する2つの人影があった。

「ティナさん、本当について行かなくても宜しいんですの?」
「たまには一人で羽を伸ばさせて差し上げないと……私が同行すると行きにくい所もあるでしょうから。それにご主人様の居場所はこちらでリアルタイムでトレースできますし。いざというときにはどうとでも対応できます……さぁ、私達も忙しいですよ。ご主人様が留守の間しっかり屋敷とサーバをお守りしなきゃ行けないんですから」
「はい、了解しましたわ〜♪」

管理人が近くのステーションから公共交通機関に乗り込むのを確認した上で、彼女たちは屋敷の警護を固めるべくそれぞれの配置へと散っていったのだった。
 

 4/30 夜

 「ふぅ〜、豊作豊作……やはり価格はこちらの方が若干安いなぁ」

ホテルにチェックインし、その日の戦利品を確認する管理人。その日、サイバーシティにて収穫した戦利品は背中のリュックに収まりきらず両手の手提げ袋いっぱいにあふれていた。

「とはいえ、この状態じゃあ明日の行動に支障がでるし。かといって宅配便で送るのもなぁ・・・・・・そうか、全部解体してしまえばいいのか」

管理人は戦利品のパッケージを全て分解、最小の容積にパッケージを折り畳みリュックに納めることに成功、更に若干の空きスペースを創り出した。

「さて、明日の予定だけど。今回は時間制限ほとんどないし……ふむ、かねてより話題の靖国神社へ参拝するか」

決まったからにはコースの調査、しかし此処で管理人は思わぬ事態に遭遇する。
管理人が取ったホテルと靖国神社はロイヤルパレスを挟んでほぼ反対側、ロイヤルパレス地下は保安の関係上地下鉄が通っていないためぐるりと迂回して行く必要があるが、どうしても途中で一度は乗り換える必要がある。しかし首都の地下鉄都といえば複雑怪奇の代名詞。首都の人でさえ案内図無しには乗り換えが出来ないと言う凶悪な代物なのだ。ましてや地下鉄乗り換え初体験の管理人、さてどうする?

「タクシーやバスと言う手もないこともないけど……いいや。迷ったら迷ったで乗り直せば済む」

迷子と言っても山の中で遭難するわけじゃなし、ともかく言ってみることにした

しかし、首都の地下鉄はなかなか手強い代物だった……(笑)
 

さて、すったもんだのあげく、到着した靖国神社……

「思ったより静かだな」

というのが管理人の感想。むしろ騒がしい京都市内に隣接する京の神社に慣れきっているせいか周囲の騒音が全く聞こえないのは首都にしても珍しい体験だった。境内にはこの国の自衛機構に所属するらしき人も参拝に訪れていた。神社自体は特に国家色や戦争色を漂わせる物はなくごく普通の神社で有った。

むしろ、そういうものは隣接する展示館に集中して置かれていた。
この国が建造した世界最大戦艦「大和」の主砲
当時世界最高クラスの戦闘能力と航続距離を誇った「三菱艦上零式戦闘機」
など、技術の結晶が様々な形で展示されていた。

そうして、有ることを管理人は知る

靖国神社は明治維新以降、この国のために戦って亡くなった人全てがまつられていると言うことを
 
 

さて、ティナ達に土産を買い求め販売コーナー立ち去ろうとした時のことだった。

「ほーっ ほーーっ」
「なんだ?」

低い鳴き声に気が付いて手元を見ると手提げ袋の中にちょこなんと掌サイズな灰色の鳥が座り込んでいた。
言いようによっては某美少女ゲームメーカーのマスコットキャラ「でぽ雀」とかいうのに似ていないこともない
が、この鳴き声は断じて雀なんかではない、フクロウだ

「こら、どっから舞い込んだか知らないけど、これから帰るんだからおりなさい」
「ぴーっ!」

手提げの紙袋の中で短い羽をパタパタ羽ばたかせてチビフクロウは抗議する。困り果てていると年老いた宮司さんがやってきた。すこしふくよかでどこか日だまりで丸くなっている猫をおもわせるような暖かみを感じる人だった

「おや、どうやら気に入られた様ですな」
「気に入られてもこまるんですけど(^^ゞ」
「時々貴方のように気に入られる人がいるんですよ。珍しい とはいえ例がないわけではありません。それにフクロウは『不苦労』に通じます。なにかしらこの仔なりに感じるところがあるのでしょう……どうぞ連れてかえってやりなさい」
「いいんですか!? それにフクロウって個人で飼うのは確か禁止されているはずじゃあ」
「その手続きは私が行っておきます。この仔を宜しく頼みますよ」

例があるだけにその対処も心得ているらしい。詳細な手続きは宮司さんがしてくれると言うことだ。
私は宮司さんに御礼と別れを告げ数歩あるいたとき、妙なことに気が付いた
宮司さんは仔フクロウのことを「この仔」と呼んでいなかったか……!?

振り返るとすでに宮司さんはいなかった。ただ、近くの梢が僅かになっただけだった。

「仕方がない。連れて帰るか……ほら、嬉しいのは分かるが紙袋の中で羽ばたくな!破れる!!」

やむなくその日は仔フクロウを紙袋のてっぺんに乗せ連れ歩いた。銀座や新宿ではかなり奇異な目で見られた。唯一の例外は池袋。もっとも「イケフクロウ」とかいうマスコットのおかげもあったかも知れないがネーミングとして如何な物か。

そうして、深夜のエアバスにのって屋敷へ到着したのだが、管理人を待ちかまえていたのは……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「何連れて帰っているんですかっ!! 返してらっしゃい!!」

文字通りのティナの雷だった

「いや、向こうの宮司さんも連れて帰って良いって言ってくれたし、ね」
「一体誰が面倒見るんですか! それにエサはどうするんですか!!」
「あー、忘れてた」

基本的にフクロウは肉食のため普通の人間が食べるような肉ではダメなのだ。出来るだけ完全な血や骨髄までふくむエサを与えないと栄養失調に陥ってしまう。それになにやらフクロウがメイルの方をじっと見ている……ってやばい!

「まったまった!その子はダメだって!!」
「ぴーっ!!」

音もなく急に飛び出す仔フクロウ、慌ててメイルをかばう管理人をすり抜けメイルの向こう側へと素早く飛びかかる。其処にいたのは一匹の……ネズミ?

「あら、大陸からのクラッカーですわ」
「クラッカー? これが??」
「ええ、彼らはこちらへ進入するときに発見されにくいようにネズミ等の小動物に姿を変えて進入してきます。こいつら食べてくれるのなら……ちょうどいいです。存分にお食べなさい♪」
「ぴぃ♪」
「でも、いいのか?こんな物食べさせて……(^^ゞ」
「食べられないゴミはコア・ペリットとして吐き出すみたいですね、それを解析すればクラッカー達の足取りも追えますからちょうど良いです」

どうやら、最大の関門であるティナにも気に入られたようだ。レイナは。というと・・・・・・すでに此の仔ようの止まり木やら出入りしやすいように屋敷の改造に入っていた。

「マスタァ〜。何とかしてよぉ」
「あー、大丈夫大丈夫。結構賢いからメイルはエサじゃないって教えれば分かるはず。多分」
「食べられるのはボクなんだよっ! 人ごとだと思って!!」

流石に喰われ掛けたのが余程怖かったのか管理人にしがみついて震えているメイル。そんな彼女に嫌われたのがショックなのか壁際に影を背負って仔フクロウは落ち込んでいた。どうやらメイルをエサとしては見ていないようだ(もっとも彼女はスレンダーなのでエサとしても余り食べるところは……げふんげふん)

「名前がないと呼びにくいです〜。ご主人様、命名宜しくお願いしますわ」
「んー、ほーすけ でどう?」
「普通ですわね」
「捻りがないです」

「ほーっ!!」
羽をパタパタさせて私の肩に乗るほーすけ、って痛い!?

よくみると縫いぐるみ然としたその胴体から鋭い爪がぬっと突きだしていた。こんな爪で捕まえ得られたらまず脱出は不可能だろう。これからエサにされるクラッカーにちょっとだけ同情した。

かくして、屋敷に新たな家族が加わった。余談だかGWのクラッカー来襲は彼の活躍により殆どこれと言った被害もなく収まったことを此処に付け加えたい。
 
 
 
 

終わり