*おまんじゅう。*
(黎深・絳攸・邵可)
【1】
「聞いたよ黎深。絳攸殿に毎日お饅頭を作ってもらっているんだって?」
「あ、兄上、そ、それをどこから……」
「絳攸殿がこぼしてたよ。『自分には饅頭作りの才能はないのに、無理矢理作らされてる』って」
「あいつ……!」
「ふふふ。絳攸殿をあまり困らせてはダメだよ。絳攸殿が主上付きになって、会う時間が減って淋しいからって」
「そ、そそそそんなことありません!!」
「ひとこと言えばいいんだよ、『一日一回は吏部にも顔を出して』って。君はいつもひとことが足りないんだから」
「そんなこと言えません!!! じゃなかった、そんなこと思ってません!!!!!」
「私にまでカッコつけなくていいんだよ、氷の紅吏部尚書殿?」
「……っ、兄上ぇ……」
「ほら、そんなことで泣かない。絳攸殿にちゃんと言って饅頭作りを終わりにしてあげたなら、また名前で呼んであげるよ」
「…………イジワルです、兄上」
「今頃気付いたのかい? ほらほら、早く絳攸殿に言っておいで」
「………………はい」
【2】
「黎深、このところほとんど毎日、いくつもいくつもお饅頭を食べているんだって? そんなにたくさんお饅頭を食べていたら、太るよ?」
「!! 兄上、私が太ったと……!?」
「ううん。君は相変わらずキレイな体つきだよね」
「あにうえ……v」
「でも、毎日続けていたら、今はよくてもそのうち太っちゃうんじゃないかと思って」
「ふっ、ご心配には及びません」
「? 何か鍛錬でもしているの?」
「いいえ。食事量を控えていますから」
「…………そこまでして絳攸殿の手作り饅頭が食べたいんだ……。実は私もいくつかもらったのだけど、その、お世辞にも絶品とは言い難いお饅頭だよねぇ……?」
「そんなことはありませんよ。味も形も悪いですが、気持ちだけは入っていますから。私には何にも勝る美味です」
「……それを直接絳攸殿に言ってあげたらいいのに」
「何かおっしゃいましたか、兄上」
「――ううん。黎深、絳攸殿に『ごちそうさま』って伝えておいて」
【3】
「はあぁぁ……」
「浮かない顔をしていますね、絳攸殿。息抜きにお茶でもどうですか?」
「あ、邵可様。お気遣いありがとう存じます。あ、そだ、ちょうどよかった。お茶請けに、これ……」
「………………ええと、これは……?」
「饅頭です」
「あ、そ、そうでしたね……(饅頭だったのか)」
「このところ毎日アノ人に作らされていて……。形が悪いのは私も分かっています。いくら作っても味もあまりよくならないし……」
「え、絳攸殿の手作りなのですか!?」
「ええ……。どうしたらいいんでしょう、邵可様。私には饅頭作りの才能はありません。でもアノ人は毎日饅頭を作ってこいと! ここ1か月ほぼ毎日です!」
「…………ここ1か月といえば、絳攸殿が主上付きにされた頃からですね……」
「はい。仕事があるわけでもないのに、饅頭持って毎日吏部に通ってます」
「そうですか……。黎深は相変わらず不器用で素直じゃないですねぇ……」
「え? 何ですか、邵可様」
「いえ、聞こえなかったのなら結構。――お饅頭、頂きます」
END.
拍手お礼としておいていたおまんじゅう関連のSSです。ランダムで3つが出てくるようになってました。

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