雅叙園の美             宮岡定子
 
今年も初詣バスツアーは都内となった。目黒不動尊・雅叙園(昼食)・東京ミットタウン・NHKスタ

ジオパーク見学の行程だ。中でも雅叙園の百段階段見学に心惹かれる。目黒不動尊からは割

合近く、バスはやがて雅叙園に着いた。外見からは近代的な装いで、スカイブルーの膨よかな

建物に見える。ぞろぞろと玄関を入ると、係の方の誘導でエレベーターの前に立った。

なんとなんと、螺鈿を張りつめた模様だ。説明によると唐獅子牡丹と言う模様。48人乗りで広い。

四方と天井にも螺鈿の模様で息がつまりそう。そこここで感嘆の声があがる。

何人かを残して次に進んだ。これから先はどういう事になるのやら興味津々。

先に進むと白いスリッパが用意されていた。これを履いて百段階段を上がるらしい。

百段階段は一気に百段上がると思っていたが、私の想像とは違っていた。

有形文化財指定の『百段階段』は昭和10年に建てられた木造建築で、欅の板材で作られ

九十九段あることから『百段階段』と呼ばれている。よく磨かれて黒光りしている。

この階段の南側には6つの部屋があるとかで20段上がるごとに、右側に部屋が作られている。

最初の部屋は漁樵の間といい太い床柱には右に養老の滝、左に浦島太郎が彫刻されていて、

彩りも美しい。先々に螺鈿の間・草丘の間・静水の間等があり、草丘の間からは富士山が見える

と言う。この日は薄曇りで富士山は見えない。窓のガラスは、日本のガラスの技術が未熟だった

頃の物で、外の景色がゆがんで見えた。 部屋に行く廊下には紫檀や黒檀の高価な板材が使わ

れている。欄間絵、格天井の絵もすばらしい。

雅叙園の200の部屋の絵を58人の画家達が描いたと言う。数々の絵の中には、鏑木清方、

伊東深水の絵もあった。 園内には神殿が4つあり、結婚式は年間100組余りあると言う。

この日も結婚式があり、作り滝の前で新婚さんを撮っていた。昼食の為、大広間に向かう。

4階の長い廊下の天井にも絵が隙間なく飾られていて、ここでも優雅な雰囲気に浸った。

昼食は幕の内弁当もどきで温かいものはなく少し残念。案内人によると、ここには1億円のトイレ

があると言う。 食事を終わった人達が、三々五々下りて行く。1階のトイレの前は行列だ。

入り口の衝立には螺鈿の孔雀が描かれていて天井には唐風の絵で鮮やかだ。時間が来て

夢の宮殿を後にした。バスが目黒川を渡る頃、振り返ってみた。昭和の初期に増築オープン

したと言うこの素晴らしい宮殿は、一見の価値があることを実感した。    

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