釣行記

福島県飯豊釣行記                                大沢 飛映

 飯能を出発して、約六時間、山都町から一ノ戸川づたいに入り、一ノ木川・川入部落に着い

たのは四時三十分で、まだ外は暗かった。村杉荘のおやじさんが案内してくれるという約束の

時間は五時なので一眠りすることにした。 

 どうも田舎と云われる所は、警戒心なんてないようで、戸が開いていた。中に入って寝る者、

どこからか布団を見つけて来て寝ている者もいる。私は眼が冴えて眠れなかった。おやじさん

が起きて来たのは五時少し過ぎ、外は明るくなっていた。

話によると藤巻川の合流点の下流で大型のヤマメが出るとのことで私たちの班三人は合流点

下一キロ位のところから入渓することにした。大岩がゴロゴロしていて、非常に渓相が良く、大

型ヤマメがいそうな感じであった。
 
二人以上で釣る時は、まず下流から釣って後を追いかけると云ういつものパターンである。

森住さん、田島さんの二人は上流へ釣り上がって行った。一投目に四寸位の岩魚が釣れたが

放流。まずさい先の良いスタートである。続いて五寸、六寸とヤマメが釣れた。これなら後を追

いかけても、ポイントを拾っていけば、合流点までには、あまり型は良くないが、どうにか、魚籠

には二十匹位が入っているはずと内心ニンマリした。

 荒瀬へ一流し、目印が止まった。岩魚かなと思い軽く合わせると、ググッと来て、まあまあの

型の岩魚と思いきや、何と六寸強のハヤである。頭に来てヤブに投げ込んだ。これからがいけ

ない。釣れるのはハヤばかりそれも型が良いのである。岩魚みたいなアタリのするもの、ヤマ

メみたいにコンコンと当たるもの、これがみんなハヤなのである。もう諦めて魚籠に入れること

にした。

雪代の終わり頃に来た時はもう少し上流だったのにと思いながら急いで上流へ釣り上がった。

途中岩魚の六寸位のが一匹釣れたがあとはハヤだけである。やっと二人に追いつき聞いてみ

るとやっぱりハヤだけでヤマメ岩魚は釣れないと云う。森住さんの魚籠をのぞいて見ると八寸

以上もある大きなハヤが入っていた。ハヤ混じりのヤマメと云うのは良くあるけど、これではヤ

マメ、岩魚混じりのハヤである。もうこれでは見込みがないので、場所を変えることにした。

 翌朝、岩沢さんに起こされた。雨が少し降っていたが、朝食までに民宿の下を一時間ほど釣

って、ヤマメ、岩魚を一匹ずつ。朝食後、残留組四人、武内さん、大野さんは、黒又川合流点

から、小久保さんはその下流三キロ位から、私は藤巻川合流点からそれぞれ上流へ釣り上が

ることになった。ところが合流点の橋の少し上に釣り人が居るではないか。しかしもう釣り場が

ないので仕方なくハヤを覚悟して、また昨日釣った所より少し下の橋から釣り上がることにした。

増水していて、条件も良いし、昨日木崎さんが○八号のハリスを切られたと聞いていたので、

今日こそは大型ヤマメを釣ってやろうと思った。

 エサを付けて、一投目にまたまたハヤ、続いてハヤ、やっぱりみんなハヤばかりである。

気を取り直して、荒瀬、大淵、それに岩魚の付いていそうな岩周りだけを攻めることにした。

これだけでも大川のポイントは多く、思ったより時間がかかってしまった。もう少しで合流点だな

と思いながら、大淵の所へ来た。大物が居そうな気配がしたけれど、またまたハヤ、今度は落

ち込みの巻き返しにエサを投入、コンコンと来て、竿先が水中に引き込まれた。「でかいヤマメ

だ」と思い、竿をためた。なかなか出て来ない。「だけどヤマメにしては引きがおかしい岩魚かも

知れない。小型の岩魚が沢山いるのだから大型が居てもおかしくない。大物なんてめったに出

会うこともない。時間さえかければ○六号通しなので切られることはない」と思いながら慎重に

大岩からジャリ場へ降りた。魚がキラッと光った。「アレッ、マスかな?でもこんな所にマスが居る

とは?少し痩せて居るみたいだ。ハヤだ=」そのまま引っこ抜いてしまった。まさかこんな大きい

ハヤが居るとは思わなかった。測ると尺あるのである。もうガッカリして上がることにした。

久しぶりに魚籠は重くなったけれど、ハヤの方が断然多いのである。それでも岩魚が十九匹

入っていた。