蔵王                          高野館
 
スキーを始めて何シーズン目かのとき、樹氷の中を滑りたいと思い、仕事が済んだ夜、蔵王

に向かった。当時は外環もなかったので、加須インターから東北道に入り、一路目的地を

目指した。

居眠り注意の看板があるように変化の乏しい高速道が長く続いた。

福島飯坂インターを過ぎ、白石インターで高速道を下りた。一般道を蔵王に向けて走った。

蔵王エコーライン入口の料金所には係員は誰もおらず、そのまま通り過ぎた。

それにしても夜が遅いせいか走っている車といえば、自分たちの車だけのようだった。

周りに木々を見ながら山を登っていった。周囲がだんだんと雪山になり、白く光ってきた。

宮城蔵王の看板が見え、スキー場も近いようだ。冬の深夜の静けさの中、薄明かりのゲレ

ンデが近づいてきた。

 峠を越えれば山形蔵王まであと少しかと思っているうちに、突然道路がなくなり雪山だけ

が現れた。途中、道を曲がった覚えはなく、脇道にそれたのではない。

そこで初めて冬期閉鎖の道路だと気づいた。ゲレンデが一層寒そうに見えた。

道路地図は確認したが、埼玉の感覚で冬期閉鎖は頭になかった。

目指す目的地は山向こうの山形蔵王である。もう少しで到着し、休めるとの思いが一気

に崩れた。雪がなければすぐ先であるが、今はそうはいかない。

今来た道を福島飯坂インターまで戻り、栗子峠を越え、米沢、上山を通り、目的地の

蔵王温泉にやっとこさ到着した。未だ夜は明けていなかった。

この間、車内がことのほか静かであったのはいうまでもない。

旅行記