アプト2005
「始発・千頭」 |
千頭駅6番ホームから井川線は発車する。軽便鉄道並の小さな車体にJRと同じ軌間1067mmがアンバランスだ。 |
井川線 千頭駅 |
井川線は、日本で唯一のアプト式ラックレール区間を持つ鉄道である。この線の歴史は、1935年(昭和10年) 3月20日に大井川電力が大井川の電力開発用に千頭〜大井川発電所間に敷設し運転が開始された。開業当時は軌間762mmの軽便鉄道であったが、翌1936年11月19日に大井川鉄道本線直通運転ができるようにと本線と同じ1067mmに改軌された。後、1954年(昭和29年)4月1日中部電力により大井川ダム〜終点・堂平まで全線開通し、1959年8月1日より大井川鉄道に貸与され現在に至っている。1990年(平成2年) 10月2日、長島ダム建設に伴い、水没する川根市代(アプトいちしろ)〜川根長島(接阻峡温泉)区間を新線に付け替え、アプトいちしろ〜長島ダム間1.5kmを日本唯一のアプト式ラックレール鉄道として再開した。これは、観光客誘致のためだけでなく本線では蒸気機関車の動態保存により技術が伝承され、更に、日本で唯一、碓氷峠で使われていたラックレール方式鉄道の廃線から27年振りに復活させた関係者の努力に敬意を表したい。運賃は高いが非常に珍しい鉄道である。チャンスがあれば是非ご乗車をおすすめしたい。
運用・・・
このアプト式ラックレール区間(アプトいちしろ〜長島ダム)の1.5kmは、DC1500V電化されており、専用のED90型3両が配備されている。その他の区間は、すべて非電化で内燃機DD20により運行されている。機関車はすべて後補機である。
アプト式・・・
アプトはドイツ語読みでスイス技師、Roman Abt氏の考案し、特許を取得したラックレール方式の一種を言う。これは3条のラックレールを120°位相で配置し、ピニオンギヤーの組合せによる方式をいう。ラックレール方式にはこの他、リッゲンバッハ、シュトループ、ロッヒャー、フォンロール等の方式がある。但し、日本のではこのアプト式しかない。